グレイディーアの欲
「はあ……」
今日何度目かの溜息がドクターの口から漏れる。
溜息をつくと幸せが逃げるというが、連日の会議で時間を取られ、デスクに向かえば書類やメールの確認と処理……。その合間に、指示を仰ぐオペレーターがやってきたり、遊びにくるオペレーターがいたり……。気づけば就業時間が終わり、ドロス艦内も静かな時間になっている……ということが、ここ最近多くなっていた。溜息が止まらないのも当然だった。
パソコンに表示されている時計は二十一時半を表示していた。今日の仕事はいまいち捗らなかったな、と大きく背伸びをしたあとに、また溜息が出る。まだ書類は片付いていないが、急ぎの内容ではないしまた明日でいいかと思っていると、執務室のドアが二回叩かれた。
「どうぞ」と声をかけると、長身の白い女性が部屋に入って来た。白磁の肌、透き通る白い髪、それを引き立てるような黒い帽子と服。しゃんと伸びた背筋とヒールの高さも手伝って、頭が天井につくのではないかと思ってしまう。
彼女が——グレイディーアがロドスに来てからしばらく経つが、交流という交流はあまりしていない。滅多に見かけることがなく、まさに神出鬼没という言葉がぴったりのオペレーターだ。ただその美しい姿は、見かければ目をやってしまう。存在感があるのに、見かけることは少ない。不思議なオペレーターだった。
グレイディーアはそのまま真っすぐドクターの方へ歩み寄ると、「今晩、部屋を訪ねても宜しいかしら」と前置きもなく聞いてきた。
「構わないけど……、話なら今聞けるよ?」
「いいえ、ドクター。
と、用件だけ伝えると、さっさと執務室から出て行ってしまった。
プライベートな時間で話……。何か悩みでもあるのだろうか。
◆ ◆ ◆
廊下に人の気配を感じることがなくなった二十三時頃、グレイディーアがドクターの自室にやってきた。先ほどと同じノックの仕方。今度はドクターがドアを開け、彼女を部屋へ招き入れた。
「お邪魔致しますわ」
「ん。そこに座ってて。えーっと、何か飲みたいものある?」
「お構いなく」
「そういわれてもね……」
客人なのだ、もてなさないわけにはいかない。
「美味しいかわからないけど……」
質素な白いティーカップに赤いローズヒップティーを注ぐ。このハーブティーを初めて飲んだときは、その華やかな香りとは裏腹の酸味にびっくりしたものだ。今は慣れたもので美味しいと感じるが——そんな風に思ったものを出して平気だったろうか。今更ながら不安になる。
「いただきますわ」
ティーカップに口をつけ、こくりと小さく喉をならす。味について言及はなかったが、少しだけ表情が和らいだように見える……気がするので、不味くはなかったのだろう。
飲み物を飲んでいるだけなのに、グレイディーアはとても美しかった。見ているこちらも自然と背筋が伸びてしまう。
「それで、要件は?」
グレイディーアからどんな悩み事が出てくるのか、全く想像がつかなかった。普段何をしているのか分からないし、よく一緒にいるのはスカジやスペクターくらいで……。まさか友人が出来ないという相談だったりしないだろうか。もしそんな相談ごとだったら、なんと返せばいいのだろうか。それとも、普段の仕事が遅いと言われたりするのだろうか。まさか、自分のことが好きと言ったり——
「ええ、ドクターの性処理をしようと思いまして」
「ふむ、なるほど」
性処理か。確かに相手はいないから一人で済ませることばかりだ。たまに仕事中にムラムラして執務室で抜いてしまう時もある。ここでグレイディーアが相手をしてくれるなら、少しは欲求も解消されるかもしれない。名案だと思う。なにせこんな風に話を切り出してくるオペレーターは他にいないし。
「何言ってんの……」
「あら、良い提案だと思いますわ、ドクター。特定の相手はおらず、仕事中に自慰を行うくらいなら、私がお相手致しますわ。そうすれば少しは気も晴れましょう」
「な、なんで仕事中のことを……」
グレイディーアは「匂いでわかりますわ」と切れ長の目を少し細めて言った。口元はなんだか嬉しそうだ。そうか、窓を開け、消臭スプレーをふりまくだけでは不十分だったか。そうなるとやはり仕事中に抜くのはよろしくないだろう。……当たり前だが。
「あー、確かに仕事中にするのは良くないよな……。それは反省するし、今後はしないようにするよ。だから相手をするとかそういうのは……」
言い終わる前にグレイディーアは椅子から立ち上がり、こちらへ身を寄せてきた。手を背もたれにかけ、顔と顔があっという間に近づいた。グレイディーアの口から良い香りの息が微かに漏れる。先程飲んだローズヒップティーとは違うものだ。何の匂いだろう……。
そう逡巡しているうちに、グレイディーアの唇がドクターの唇へ重なった。心臓がドクンと強く脈を打つ。薄いが、柔らかい感触。優しい……とは言えない、割と力強い口付けだった。後頭部と顎を手で押さえられ、にゅるりと舌が入ってくる。唇を閉じようにも、その力強さにはとてもじゃないが抗えなかった。
「んぐっ……ん゛っ‼︎」
口の中を舌で掻き回される。舌の腹をなぞられ、歯の裏も舌で弄ばれる。それよりも気になるのは、舌と一緒に入ってきた謎の粒だ。錠剤だろうか。そんなに大きくなく、糖衣なのか甘い。グレイディーアの息と同じ匂いがするが、ああ、この匂いなのか。
「む゛ぅッ!う゛う゛!」
何か分からないものを飲み込む訳にはいかないと、懸命に押し返すが、グレイディーアに力で敵うはずもなかった。まさかディープキスでそう思うことになるとは思ってもいなかった……。
どうやらこの錠剤を飲ませたいらしい。
飲むまでこのキスは終わらないだろう。流し込まれる唾液でだいぶ飲みやすくなっているが、ダメだ、飲むわけには……。
そう抗ってみたが、喉が勝手に唾液を飲み込んでしまった。一緒に錠剤も流し込まれたのか、口の中にある異物はグレイディーアの舌だけになった。
その舌は口の中を隅々まで舐め回してきた。錠剤が残っていないか、舌の裏、頬と歯の間……。先程は驚いて気にする余裕もなかったが、改めて意識すると、グレイディーアの舌は熱く、柔らかい。
「は……」
ようやく唇が離れる。無理矢理錠剤を押し込んで来た彼女の顔は、変わらず凛々しいままだ。口元が涎で濡れているのがなんだからしくない。
「おま……、何を……」
飲ませた、と言葉に出来なかったが、何を言いたかったのか理解したようで、「精力剤ですわ」とあっけらかんと言い放たれた。
「即効性があるものらしいので、すぐ元気になると思いますわ」
「らしいって……」
唇を舌で舐め、指で軽く口元を拭う仕草がいやに扇情的に見えるし、ドクターを見つめてくる赤い宝石のような瞳に吸い込まれそうになる。
白い髪がドクターの顔にかかった。細くしなやかな感触が頬をくすぐるが、それも重なった唇の柔らかさに上書きされる。
先程の舌を絡めた口づけとは裏腹な、優しいキスだった。唇同士を重ね、時折下唇を軽く吸われる。舌がゆっくりと入ってくるのが心地よくて、ドクターもそれに応えるように舌をゆっくりと絡める。
「ん……」
鼓動が強くなるのを感じる。驚いたせいで早鐘のように打っていた鼓動とは違う。人と……女性と、——意識していた
そっとグレイディーアの指がドクターの足へ触れた。スラックス越しに太ももを撫でられ、思わず躰が反応してしまう。指は気にせずに太ももを撫で続け、ゆっくりと、股間の方へと移動していった。
股関節をなぞられ、太ももの内側へ手が行く。それが気持ち良くて、足が自然と開いてしまう。
「っ……」
指がスラックス越しに逸物へ触れた。頭がぼうっとして気付かなかったが、血液が集まったそれは窮屈そうにしている。
「グレイディーア……、ダメだって……」
「いいんですのよ、我慢しなくても。これからは私がドクターを慰めてさしあげます」
そう言いながらスラックスのボタンとチャックを外し、膨張しきったペニスを解放する。ひんやりとした指先が竿を撫で、亀頭に触れる。
「ん、ぐっ……」
軽く触れられているだけなのに、それだけで気持ちが良い。もっと触ってほしくて、力を込めてほしくて、腰が動いてしまう。
「ふふ、気持ち良いのかしら。でも乾いたままだと痛いでしょう?」
そう言いながら足元へ屈み、口をペニスへ近づける。
グレイディーアの息がかかり、これからその口の中へ包み込まれると思ったら、理性なんて抑えられる訳がなかった。
「う、ん……」
余裕のない声が漏れた。こんなに情けない声が出るのかと恥ずかしくなったが、唾液に濡れた舌が亀頭に触れた瞬間、恥ずかしさなど吹っ飛んでしまった。
少しざらっとする舌は、唾液を亀頭に丁寧に塗り込んでいく。尿道口に舌先が触れ、少しだけ中をほじられる。慣れない感覚だが、グレイディーアが舐めているという現実が全てを快楽へと誘っている。唾液が陰茎を伝うのが見えて、それすらも興奮する材料になった。
「ドクター、とても良さそうですわね」
そう言いながらグレイディーアは手でゆっくりとペニスを扱きはじめた。唾液がくちゅくちゅと音を立てる。滑りが悪くなればグレイディーアが涎を垂らす。
手の動きが徐々に早まり、指がカリに引っ掛かる度に声が漏れてしまう。
「うっ、んん……。グレイ、ディーア……、ダメだって……」
「何がダメなのですか?
普段は表情が張り付いてしまったのかと思うくらい無表情で冷たい印象の彼女だが、今は少しだけ微笑んでいる。若干頬が紅潮しているように見えるし、ドクターを見つめる視線は熱い。
陰茎を扱きながら、グレイディーアは舌を伸ばして我慢汁を舐めとる。口の中でゆったりと味わい、小さく喉をならして「おいしい」と呟かれて、我慢も限界を迎えた。
「ああっ、もう、射精る……っ」
「ええ、もう限界ですわね。でも、どこに
「んうぅ?」
どこに、
今頭の中は射精をしたい一心で、そんなことに思考が回らない。
「あ……っ、う……。く、くちに……」
「飲んで欲しいのですか?いいですわ、たっぷり出してくださいませ」
グレイディーアはそう言うと、亀頭をすっぽりと口で覆い、裏筋を舌で舐めながら、手で竿を扱く。
下半身が溶けてしまうのではないかと錯覚してしまうくらい、今まで感じたことのない気持ち良さ。グレイディーアの方を見る余裕もなく、天井を仰ぎながらドクターは限界を迎えた。
「あああっ!
どくん、と心臓が強く鳴る。
躰中の全てが出てしまっているのではないかと思うくらい、勢いよく精液が放出された。グレイディーアはそれを顔色ひとつ変えず、口の中で受け切っている。
「あ、あ……」
こんなに激しい感覚ははじめてだった。精力剤のせいだろうが、こんなのを味わってしまったらいけない気がする。それも、グレイディーアの手で、口で——
グレイディーアがペニスから口を離し、口を大きく開けた。舌の上には自分でも見たことのない量の白濁液と、泡だった唾液が溜まっている。口を閉じ、顔をドクターの方へ寄せてくる。喉を耳元へ近づけたグレイディーアは、ゆっくりと、大きな音を立てるように、ごくりと喉を鳴らした。
「ん……、とても濃いですわね、ドクター」
「……薬の、せいだろ……」
グレイディーアはふふっと微笑うと、再び手で竿を扱いてきた。
「射精したのに、萎える気配がありませんわね。いくら精力剤を飲んだからといって、これは元気すぎますわ」
「ちょっ……!
くすぐったい……、筈なのだが、その感覚はなかった。先程と同じような、それ以上の快感が全身を駆け抜けていく。こんなことはじめてで、頭の中が混乱する。
「あっ、あっ……!くっ……、グレイ、でぃ……んん゛っ」
「ああ、ドクター。気持ち良いのですね、腰が動いていますよ。物足りなかったら、もっと激しくして差し上げますわ」
そういうと、亀頭にも刺激がやってきた。敏感になっているところを、グレイディーアの指は加減せずに刺激してくる。指がカリ首を何度も引っ掛け、裏筋を擦り上げる。こんなこと今まで経験したことなくて、悲鳴にも似た声があがってしまう。
「ひっ、あっ♡ダメだっ、て♡やめっっ」
「そんなこと言って、顔が笑っていますわよ。射精後に弄ったことはありませんの?とても気持ちよさそうにして……。それとも、本当にやめます?やめてほしかったら、仰ってくださいな」
唾液を肉棒に垂らしながら、グレイディーアは優しく語りかける。手の動きは弱まることも、強まることもない。一定のリズム、一定の強さで、竿と亀頭を弄り続ける。
「……うっ、んんっ……!や、やめ、ない、で……」
腰が引けてしまう。
これ以上はダメだと脳が叫んでいる。
でも、グレイディーアの指を、手のひらを、もっと感じていたい。この後どうなるか分からないけれど、ダメだと
「素直ですわ、ドクター。女の子のように鳴いて、喘いでいることにお気付き?とても可愛らしいですわ。ほら、私の目を見て……。ふふ、顔を真っ赤にして、涙まで浮かべて……。オペレーターたちが見たらどう思うでしょうね?」
「ううぅ♡そういうこと、言うな……、あああぁぁ……」
グレイディーアの声が脳に響く、屈辱的なことを言われたはずなのに、ペニスへの刺激が強すぎて何も感じなかった。
「あう、ぐれぃ、でぃーあっ、だめっ、だ……っ!それ以上はッッ……」
「出てしまいそうですか?良いのですよ、どんな情けない姿でも、私はドクターを軽蔑したりしませんわ。私にドクターの全てを見せて下さいませ」
「ふ——っ!ああっ、あああ゛あ゛あ゛‼︎」
ぢょろっ、と勢いよく尿道口から透明な液体が噴射された。
放尿してしまったという羞恥心、グレイディーアの顔が、服が汚れてしまったという罪悪感と、高揚感、情けない姿を見られたという恥ずかしさ——色んな感情が目の前をぐるぐると駆け巡り、もう訳がわからない。
「あ、あ……♡」
「ふふ、よく出来ましたわ。射精したあとに潮吹きまで……。ドクターはとんでもなくいやらしい人ですわね」
そういわれて、否定も出来なかった。
息をすることで精一杯で、返事もろくに出来ない。
◇ ◇ ◇
まさか陸にいる人間に夢中になるとは思わなかった。知性がない、脆く弱い存在。それが陸に棲む者たちへの印象だったし、それは今も変わらない。だからドクターを想うなど、想像だにしていなかった。
ドクターを傍に置いておきたい、誰のものにもなってほしくないと、強く思ったのはいつ頃からだったか——
ある日、執務室に入ろうとドアに手をかけた時、ドクターの切ない声が聞こえてきた。そっと覗くと、チェアにもたれかかり、懸命に腕を動かし、息を荒げているドクターが見えた。何をしているかすぐに察したが、自慰行為が終わるまで、そのまま覗き続けてしまったのだ。
用事も忘れ自室に戻ったあと、ドクターの姿を思い出しながら必死になってクリトリスを弄ったのを覚えている。溢れる愛液をクリトリスに塗り、何度も絶頂を迎えた。
それから何度か、ドクターの自慰を目にすることがあった。その度に私も自慰をしたし、たまにドクターがいない執務室でしたりもした。
ドクターの情欲を、私が解消したい——
◇ ◇ ◇
「ふふ、さすがに疲れてしまったみたいですわね」
ベッドへ移動し、シーツの上でぐったりするドクターの頭を撫でる。ドクターの顔はずっと赤いままだし、瞳は潤んでいて、とても可愛らしい。戦場で指揮をする人と同一人物だとは到底思えない。
ペニスは絶頂に満足したのか、柔らかくぐったりとしている。それでも精力剤の効果か、いわゆる半勃ち状態だ。
ピンク色の亀頭に、そっと唇を寄せてみる。ちゅっ、とキスをすると、ドクターの躰が少し反応した。ちゅ、ちゅ、と亀頭に優しくキスを何度もする。
「あ……、グレイディーア……」
切ない、そして嬉しそうなドクターの声。悦んでいると思うとこちらも高揚してくる。
再度亀頭にキスをし、そのまま口の中へ誘う。裏筋を入念に舌で舐めながら、少しずつ竿を飲み込んでいく。
ちゅる、ちゅる——ぺちゃ、ちゅぷ……
ゆっくり、ゆっくりと舌を動かし、水の音をわざと立てていく。徐々に舌に力を入れ、顔を上下させる速度もあげていく。
「ん……、あ、それ、気持ち良い……」
丁度心地よい速さと強さなのか、ペニスはむくむくと大きさを戻し始めてきた。
「んふ」
ドクターの顔を見ながらフェラチオをするのは少し恥ずかしかったが、ドクターの切なさそうな瞳で見つめられることが、何よりも嬉しかった。
気付けばペニスは再び硬さを取り戻し、ドクターの呼吸も荒くなっていた。
また射精してほしい——
ドクターの子種をまた飲みたい——
そう思いながらペニスをしゃぶっていると、ドクターの顔が歪み始めた。同時にペニスも硬さを増し、そろそろ限界が近いのだなと
ドクター、我慢しなくて宜しいのですよ——たくさん
「グレイディーア、そろそろ……」
もう射精することに抵抗がなくなったのだろう。ドクターは目を瞑り、下唇を噛んで下半身に意識を集中させている。
「ああっ……、
ペニスが強く脈を打った。
一瞬遅れて、尿道口から白濁液が勢い良く飛び出してくる。顔と舌の動きを止め、吐精する脈に合わせて精液を喉に流し込む。二度目だが、濃く、量も多い。
ごくりと飲み込む度に喉に絡みついてくるようだった。
「あ……、ああ、グレイディーア……。凄い……飲んで……。って、ちょっ!」
射精が終わったので、フェラチオを再開した。
尿道に残った精液を搾り取るように唇に力を込め、舌で竿を根本から強く扱き上げる。頬を窄め、中のものを全て吸い出していく。
じゅるっ!じゅずずっ!ぐぽっ、じゅぼっ!
自分がどんな顔をしているか考えると滑稽だったが、ドクターのペニスを強く吸い上げると、ドクターの甘い声が脳に響く。
力を調節しないと痛がってしまうだろうから、加減が難しいと思っていたのだが……。
「あっ♡あっ♡グレイディーア、すごい、それっ、気持ち良いッ!ああっ、いいっ」
ドクターはとても気持ち良さそうにしている。
もう少し強く、もう少し強く……と、力を加えていったが、痛がる気配がない。射精直後だから敏感になっているはずだなのに。力を込めても、ドクターは気持ち良さそうに喘ぐばかりで、痛がるそぶりを見せない。
それなら思う存分奉仕出来るというものだ。
わざと音を立て、尿道のその奥に溜まっているものを全て飲み込むように、吸い上げる力を強くしていく。じゅぼじゅぼという唾液が吸われる水音、ドクターの熱のこもったいやらしい声、ベッドが小さく軋む音——
夜も更けた静かなロドスに全て響いているのではないかと思うくらい、ドクターの部屋は色んな音に溢れている。
「ああっ——グレイディーア、またっ、でるっ……、
いうや否や、びゅくっ、とドクターのペニスが脈打ち、再び吐精が始まった。何度も達しているのに、はじめて出したのではないかと思うような量の精液がグレイディーアの口の中に放出される。
「あ……、あぅ……」
全身で呼吸をするドクターを見遣りながら、ペニスから顔を離す。
こんなにぐったりして、なんて愛らしい——
そう思いながら、口を小さく開け息を吸い、鼻からゆっくりと吐く。生臭く、でもどこか懐かしさを感じる匂いがグレイディーアの顔にまとわりつく。精液を口の中でたっぷり堪能したあと、ゆっくりと喉へ流し込む。これを、躰の中に
◇ ◇ ◇
ドクターは連続での絶頂のせいか、ずっとベッドで息を乱していた。しかし、射精後は萎えていたペニスも、少し経てば再び血液を集め、怒張していく。医療班からもらった精力増強剤は、どこまで効くのだろう。
「まだ、出せますわね?」
疲れ切っているドクターに馬乗りになり、ケープを外して胸をさらけ出す。全てを脱ぐ時間が惜しく、力任せに股間周りの布を引き裂いた。ビリビリと耳をつんざくような音に、ドクターは驚いたようだか、目はグレイディーアの腰まわりに釘付けになっている。
フェラチオをしている間に自身も興奮しているとこに気付いたが、ここまでとは思わなかった。さらされた性器はじっとりと濡れていて、少し力を込めるだけで中から愛液が垂れそうになる。
「ドクター……」
耳元で囁きながら、熱り立った肉棒を穴の方へと誘導する。手を使うまでもなく、入り口にあてがうだけで、肉棒はずぶずふとグレイディーアの中へ飲み込まれていく。
「うあ……っ、グレイディーア……っ」
「ああっ……、凄い……。あんなに達したのに、この硬さ……。躰の中を貫かれているようですわ」
ペニスを挿入したことにより、疼いていた躰が若干落ち着くのを感じたが、腰をぴったりとドクターに付けた時には疼きは再びやってきた。奥の壁をぐいぐいと押し退けようとする肉棒、腰を少し動かすと、ポルチオが刺激され、余裕がなくなっていく。
「んん、んっ……。ドクターは、素晴らしいモノを、お持ちなのね……。私の躰を、こんなに悦ばせることが出来るなんて……。はぁっ、あぁッ……」
腰が勝手に動いてしまう。膣を締め付けながら腰を上げ、力を抜きながら腰を落とす。深くゆっくりと。ペニスが膣の中に埋もれる度、躰の奥にある疼きを散らしてもらえるような気がして、何度も何度もドクターに腰を打ち付ける。
「グレイ、ディーアっ。ああっ、すごい……中、気持ち、いいっ……」
「私も、とても気持ち良いですわっ……。ああ、ドクター、……ドクターっ……」
ギシギシとベッドを軋ませながら、夢中になって腰を振った。
自分がこんなに男性を、ドクターを求めていたとは思わなかった——
ドクターはぎゅっと目を瞑り、唇を噛み締めている。懸命に耐えるドクターが可愛らしく、そして嬉しかった。今、ドクターは自分の中で耐えているのだと思うと、不思議な感覚になる。
「ごめ、もう、
グレイディーアの腰を掴みながら、苦しそうな声を漏らす。
「ええ、宜しくてよ。私の
「——ッッ!ぐぅっ!——あっ、でっ——」
ドクターの腰がグレイディーアに押し付けられる。
勢いよく飛び出した精液は、グレイディーアの
「——っ、はあっ!はあ!」
「ああ……、ドクター……。私の膣内で、達してくださったのね……。気持ちよかったですか?」
膣を軽く締め付けながら、ドクターの頬を撫でる。
些細な動きひとつで、ドクターの躰はいちいち反応してくれるのが、たまらなく嬉しい。
腰を上げ、ペニスを引き抜く。ずるんと出てきたペニスと一緒に、濃く白い液体が膣内からこぼれ落ちた。
白濁液と愛液にまみれたペニスは、とても美味しそうで——
自分でも気付かぬうちに、汚れたドクターの腰回りに口を付けていた。陰嚢まで垂れた精液を舌で掬い、陰茎に纏わりついた分も舐めとる。何度も何度も舌を這わせ、下腹部にあった精液も残らず喉の奥に流し込んだ。尿道口から滲み出る精液も吸い取り、満足したところで、ペニスが再び硬くなっていることに気がついた。
「ドクター、本当に元気ですわね。また——」
もう一度跨ろうとした瞬間、ドクターは勢いよく起き上がってきた。肩を掴まれ、そのまま押し倒される。
グレイディーアにとって、ドクターの力など赤子のそれであった。ドクターが一般男性の中で非力な訳ではない。今もこうして掴まれた肩は、しっかりと力が込められている。押し倒されたのは、抵抗する必要を感じなかったから。こんな風に、ドクターがグレイディーアを押し倒すなんて、ちょっとした憧れもあったのだ。
「……なんで、こんなことするんだ」
その顔は辛そうだった。今にも泣きそうな、そんな顔。
「お、俺は……、こんな風に、グレイディーアと、したくなかったよ……」
「……」
苦しそうな声が胸に刺さった。
ドクターは顔を伏せ、言葉を続ける。
「……俺、グレイディーアのこと、ちょっと良いなって、思ってたんだ……。綺麗だし、仕事だって任せられるし……。それだけじゃなくて、なんか、つい目がいっちゃうんだ。グレイディーアを見つけると、嬉しくなるんだ……」
「……ドクター……」
顔を上げたドクターの眉間には、まだ皺が寄っている。だが、先程のような悲痛さは感じない。何かを決意したかのような——
「グレイディーアが、好きなんだ……。その、一人での女性として……、好きだ」
そう言われて、少しだけ驚いた。
そんな風に想われていたとは露にも思わなかった。
「それは、気付きませんでしたわね……」
「そりゃ、気付かれないようにしてたし……」
沈黙。
こんなにストレートに好意を打ち明けられるとは思っておらず、言葉が出てこない。
こんな感覚は、初めてだ。
「ぐ、グレイディーアは、どう、なの?」
控えめな問いに、思わず顔が綻んでしまった。なんと可愛らしい——
「ふふ、もちろん、お慕い申していますわ、ドクター。でなければ、貴方を受け入れるなど、しませんわ」
ドクターの顔が、ぱっと晴れた。
笑顔になったわけではないが、目の見開き方や眉の動きで、嬉しそうにしているのがわかる。
「グレイディーア」
ドクターはグレイディーアの頬を撫でると、優しく唇を重ね合わせて来た。そして直ぐ離れて「ああ、掃除してもらったんだった……」と、少しだけ落ち込んだ。
本当に、一つ一つの行動が愛らしい。
◇ ◇ ◇
うがいをし、水を飲み、二人でベッドの上で安らかな時間を過ごした。
服を脱ごうとしたが、それを止められて若干困惑もした。ドクターがそうしてほしいというのなら受け入れるが——胸と股間だけを晒しているのは、少し落ち着かない。
何かを話すわけでもなく、グレイディーアはドクターの腕に抱かれ、時折キスをし、微笑み合う。
ドクターの体温と心音を感じられることが、幸せだと思った。
しばらくそうしていた後、ドクターはグレイディーアに跨り、両手で胸を触って来た。慣れない手つきながらも、それが心地よい。
乳首を摘まれると、躰が強張ってしまうし、声が出てしまう。
情けない声を出してしまうのが、少し恥ずかしい。
「んぅ……、ドクター、あまり、そこは……」
「乳首、気持ち良いの?声がすごく可愛いし、硬くなったね」
親指と人差し指で、乳首を摘まれ、転がされる。力は強くないのに、その刺激が全身に伝わってきて、思わず腰がひけてしまう。
ドクターは胸にキスをし、乳頭を舐めて来た。熱くぬるりとした感覚と、舌の焦ったい動き。
「んっ!あ、あ……」
自分で自分を慰める時に唾液で指を濡らすが、こんな風に感じたことはない。
「ドクター……ふふ、あかちゃん、みたいですわ、んっ」
頭を撫でていると、大きな子供をあやしているような感じがする。
「赤ちゃんはこんな舐め方しないだろ」
つぷ、と
ドクターの指は男性らしい、骨張ったものだった。
決して男性らしさを感じたことがない訳ではないが、自分の指とは違った感触は、異性なのだと強く意識してしまう。
「あ……、んんっ」
指が膣の上の壁を何度も押し上げてくる。強い刺激ではないものの、いつもよりも——一人でする時よりも気持ちが良かった。ドクターに触られていること、指が動く度にくちゅくちゅと音が立つこと、乳首を舐められ、吸われていることが、こんなに刺激になるとは思ってもいなかった。
「ドクター……、私、もう……」
達しそう、と言おうとしたところで、尻の方に温かいものが流れて来た。ドクターが指を動かす度、ぐじゅ、ぐじゅと音が鳴る。
「あッ……!んんッ」
絶頂を迎える前に潮が噴き出して行く。指を激しく動かされている訳ではないのに、ドクターの指の動きに合わせてどんどん漏れていく。
とんだ痴態を晒した、と思ったら、より興奮してしまった。目が開けられなくなり、躰が緊張して、強く歯を食い縛る。
「ドクターっ、あっ!あぁ、イクッ!——あああっっ」
ぎゅうっと、躰中に力が入る。閉じた目の中で光がチカチカと瞬き、何も考えられなくなる。
——こんなに、気持ち良くなれるとは
躰が落ち着き始め、ようやくドクターのことにも気がまわるようになった頃、そのドクターはグレイディーアの脚を広げて、股間を押し付けようとしていた。
「……っ」
愛液と潮でぐしょぐしょに濡れた膣口に亀頭がつく。
さっきとは違う。達したばかりの
「んんっ」
「あぁ……、ぐれい、でぃーあ……」
ずぶずぶと、肉壁を掻き分けて侵入してくる異物は、奥まで入って来たところでぴたりと止まった。
「ごめん、優しく、出来ないかも……」
息を整えながらドクターは言った。
「……ふふ、そんなこと、気になさらなくて、良いのですよ」
「——っ!」
肉棒がずるっと出て行く感触がしたあと、またすぐに奥まで入って来た。
ギシっとベッドが軋む音、ぱちゅっと水が弾け飛ぶ音、腰と腰がぶつかる感じ——
「あ゛っ——!あっ、あっ、あっ!あぅ!」
急に来た激しい快楽に、思わず声が漏れてしまう。
ドクターのペニスがグレイディーアの膣内を何度も擦り上げる。
ペニスを抜かれると、中身が持っていかれそうになる。カリが上の壁を引っ掛けてくるからまた潮を噴きそうになるし、奥まで突かれると膣の中がいっぱいになり、これも膀胱を刺激してくる。
潮を漏らさないように下半身に力を込める。が、締め付けるとドクターの肉棒の形を強く感じ取れるし、抜かれた時により排尿感が強くなる。
かといって力を抜いても、漏れそうになってしまう。
腰の位置を変えようと動いてみるが、それも上手くいかない。何をしても気持ち良くて、我慢など無意味だった。
「あっ、ドクター……!また、出てしまいます……っ!」
「ん、いいよ。いっぱい出して」
ドクターはグレイディーアの気も知らずに、遠慮なく腰を打ち続けてくる。何度も腰を振り、自分の躰の
じょろっ、と音を立てて勢いよく潮が漏れた。
ドクターは一瞬腰を止め、グレイディーアが漏らすところを一瞥した後、再び腰を打ち付け始めた。唇を重ね、舌を舐め合い、全てを求め合うような激しいキス。
我慢など、もう出来なかった。
「ああっ!あ!ドクター!とまっ……、て……!」
奥を突かれる度に、漏らしてしまう。着ていてと言われた服も、シーツも、グレイディーアの潮でびっしょりと濡れていく。
「あ、はっ!はぁっ、はっ——もう、いく……っ!ドクター、いきますっ……!」
「俺も、もう……」
二人はぎゅっと抱きしめ合い、唇同士をぴったりとくっつけ、同時に絶頂を迎えた。
ペニスから吐き出される白濁液は、数度の絶頂を迎えたにも関わらず勢い良くグレイディーアの中に注がれていく。ドクターはぐいぐいと腰を押し付けて来て、それが更なる快楽を呼ぶ。
「——っ、ぁ、——っは……っ」
声が出ない。こんなに気持ち良いのは、初めてだ——
◇ ◇ ◇
あれから数日が経った。
表向きは、ドクターとの関係は変わらない。これまで通り、必要な時にしか執務室に行かないし、会話も最小限だ。
しかしこの数日、毎晩ドクターの部屋に行ってはお互いを求め合っている。精力剤などなくても、毎晩ドクターはペニスを勃起させているし、グレイディーアの躰を貪ってくる。
「さすがに昼間に自慰をすることもなくなりましたわね」
「まあ……、グレイディーアとしたいし……」
その言葉が嬉しい。そこに愛情があるから、嬉しく感じる。
「あ、あのね、グレイディーア……。今度、一緒に食事でも……、どうかな……」
「食事、ですか?」
唐突な誘いに少し驚いた。
「うん、龍門に良いレストランがあるらしいから、どうかなって……」
「ええ、良いですわね。きちんとエスコートして下さいね」
ドクターの顔がぱっと明るくなる。
素直に感情を向けられると、嬉しい——
自然と綻ぶ口元に、唇が重なる。
乾いて仕方なかった日々が、少しだけ潤ったような気がした。