セリン
セリンとレンカク 2話
1
私はたぶん、モテる方だ。
ヒトの姿を維持出来るようになり、ナワバリバトルに参加するようになると、ボーイたちから声を掛けられるようになった。
ご飯の誘い、別の日に遊ぼう、今夜予定ある?など……。誘われるのが当たり前だと思っていたから、他のガールから「そんなに誘われない」と聞いたとき、モテているのか、と思った。
誘いは全て断った。ナワバリバトルで連勝するために他の選手の動きを研究したかったし、練習もしたかったから……。誰かの誘いに乗っていたら、違うジンセイだったかも。
一、二年もすると、ボーイたちは私の体を見ていると感じた。同年代のガールよりも発育が良かったから、目立っていたかもしれない。
そんな自分のカラダが好きではなかったのだけど、体型をあまり気にしないようになれたのは、友人のリンのおかげ。
リンは一人でバーを切り盛りしているイカガールで、バンカラマッチを観戦している時に知った。強くて綺麗で、優しそうなガール。思い切って話しかけてみたら愛想も良くて、すぐに仲良くなれた。
まあ、負けず嫌いの戦闘狂バトルずきだと分かって、とんでもないヒトと仲良くなってしまった、と思っているのだけど。
「ヒトは見た目でヒトを判断するのよ。少なくともセリンはヒトを惹きつける見た目をしているってことだわ」
「でもヤリモクのボーイとか気持ち悪い。私、そんなに尻軽に見えるのかしら」
「彼らはそんなこと考えてないわよ。ただ"良いガール"がいるから誘ってるだけ。私がボーイだったら、セリンのこと好きになって、お友達から始めませんかって言ってるかも。大丈夫よ、もしキモいヤツに絡まれたら言ってちょうだい。私がそいつの手足と股間を潰してあげるわ」
「それは、気持ちだけ受け取っておくわね……。でも、そうね。少し潔癖すぎるのかも。ありがとう、リン」
……と、いう会話をしたあと、色々考えたの。ヒトは第一印象が大事というけれど、本当に最初に得る情報は見た目なのよね。例え声や喋り方だけを知っていても、見た目で萎えた、なんて話はよく聞くし。
私はどう見えていたかしら。目を合わせないように俯いて、笑わないようにして、無愛想にして……。
私が私じゃないみたい。本当の私はもう少し堂々としていて、前を向いているのに。
カラダのことは好きになった訳ではないけれど、ひとつのブキとして扱えるように……そんな気持ちでいられたら、と思えた。
そして本当にブキとして使う日が来てしまった。
使った相手は今隣で寝ているレンカク。先日恋人になったイカボーイ。
悪くない見た目のボーイが仕事バイトのノウハウを教えてくれるということで、胸くらいなら揉ませてもいいか、と思ってしまった。一応、色々天秤に掛けたのよ。そしたら胸なんて安いもんだと思えて……普段ならあんな提案に乗らない。
そして、気付いたら好きになっていた。
絶対に純粋な恋心ではない。気持ちよくなれるのが良くて、それが終わってしまうのが嫌だった。だから本当は好きじゃないのかもしれない。
でもレンカクに好きと言われると嬉しくて、レンカクが他のガールと話してると少しだけ嫉妬してしまうの。
好きなのか、ただの独占欲なのか……。
「……」
レンカクの家でご飯を食べ、少しゲームをした後、泊まって行かないかと言われたので、こうして一緒に寝ている。
エッチはしなかった。しても良かったんだけど、何となく言い出せず、レンカクもしようと言ってこなかった。でもその方が"私"自身を求められてる気がして、少しだけ嬉しい。カラダだけじゃないんだと思える。
すやすやと眠るレンカクの頬を摘んで軽く引っ張ってみる。あんまり伸びないな、と思い自分の頬を摘んでみたけど、私もそんなに伸びなかった。
2
雲ひとつない青空。風は少し冷たく、でも動けば少し汗ばむ陽気。
「というわけで、ガチアサリに行きたいと思います」
と、レンカクに連れられてやって来たのはチョウザメ造船。そういえばバンカラマッチに参加するのは久しぶりかも。
ジェットスイーパーをコツコツと二度ノックして、今日もよろしく、と心の中で挨拶をする。これをすれば勝てる、というわけではないのだけど、気付いたらバトル前にこうするようになっていた。
隣を見るとレンカクがいる。デンタルワイパーにおかしなところは無かったらしく、「よし」と呟いてこちらを見て来た。
「そういえば初めて一緒にバトルするね。よろしくね」
「ええ、よろしく」
少しだけ、どきりとした。
そっか、はじめてか。
バトルの内容は、褒められもしないけど悪くもない、という感じだった。
相手のローラーをしっかり落としたし、チャージャーのジャマも出来た。味方の援護射撃も出来た……と思う。
レンカクはというと、とにかく前線を維持してくれていた。
ふと、レンカクの姿が見当たらないな、と思っていたら、チームのチャンネルに『ガチアサリ作ったらここに飛んできて』というレンカクの声が届いた。どこにいるのかと思ったら、相手ゴール側の、狭いインクの中にセンプクしていた。
ハラハラしつつも、味方からアサリを受け取りガチアサリを作る。敵が四人こちらに向かってくるのを確認して、レンカクのところへ飛んで、ゴール目掛けてガチアサリを投げ込む。
戻って来た敵たちに二人仲良く倒されて、でも味方も頑張ってアサリを入れてくれて……なんとか勝つことが出来た。
「もう、びっりしたわよ!」
「裏取りしようかなって思ってたんだけど、ガチアサリ作れそうだったから」
ヘラヘラしながらロビーへ戻るレンカクにため息が出る。
今回のようなレンカクの動きはあまり好きではない。もし見られていたら……もし塗り意識の高いヒトだったら……。
でも現に勝っていて、ウデマエもレンカクの方が上。クマサン商会での仕事でも、レンカクは危なっかしいことを平然とやってのける。
見えてる世界が違うんだな……。
「はあ」
心にもやもやしたものが生まれてしまった。わたしはレンカクに嫉妬しているし、弱い自分が嫌いだ。なぜ私は弱いままなんだろう……。
「セリン?」
「え」
「このあと、ホテル行かない?」
レンカクに手を握られ、ミミ元で囁かれる。
あまり気分ではないけど、断ったらガッカリさせてしまうかも……。
こくん、と頷いて返事をすると、レンカクは嬉しそうに笑った。
3
ホテルの部屋は比較的空いていた。好きなモノトーンでまとめられた部屋があったので、そこを選ばせてもらった。
部屋に入るなりレンカクは私を抱きしめて、深いキスをしてきた。レンカクの腕の中で、レンカクの舌の動きを舌で受け止める。
慣れてるな……他のガールにも、たくさんこうしてきたのかな……。
「んっ……」
唇を合わせたままレンカクの首にウデを回す。今は何も考えちゃダメ。レンカクに失礼だ。集中しなくちゃ……。
「は……ふ、ん……」
レンカクの歯を舌で舐める。上の歯茎、前歯、奥歯の方まで舌を伸ばす。レンカクも同じことをして来たので受け止めつつ、今度は下の歯をなぞる。
舌と舌を絡め、レンカクが舌を軽く吸ってきた。付け根がピリピリとして、レンカクに全てを持って行かれそうだった。
私もレンカクの舌を吸う。おちんちんとは違う、柔らかいモノ。ちゅうちゅうと優しく吸っていると、レンカクは私のお尻を揉み始めた。
「あふ……」
手のひらで大きく撫でられ、お尻を持ち上げられる。両手で広げるように揉まれて、今度は寄せられる。レギンス越しに揉まれるからなんだか焦ったくて、腰を少し動かして『脱がして』と催促してみた。
レギンスに手がかけられ、下ろされる。お尻が丸出しになって揉みやすくなり、ぐにぐにと指が尻に埋もれていく。
「ぷは……」
口を離して息を吸う。レンカクの顔を見ると頬を紅潮させ、視線に熱がこもっていた。いつも笑っている好青年が、私を求めて『男』になろうとしているのを感じる……。
「あ……」
ベッドに押し倒され、フクの裾から手を入れられて胸を揉まれた。
「や……っ、はあっ、だめ、シャワー……」
「無理、すぐにしたい」
フクの中で乳首を弄られる。乳頭に人差し指の腹を置かれ、くにくにと円を描くように撫でられる。乳首は指の動きと一緒に向きを変え、次第に硬くなっていく。
「あっ、あ……、あうっ、んんっ」
乳輪を指先でさわさわとなぞられる。乳首よりは刺激が少ないけれど、背筋がぞわぞわして思わず仰け反ってしまう。
「やあ、はあっ、はあっ、ああぁ」
「セリンの声可愛い……」
フクを胸が見えるまでたくし上げられ、両胸が晒される。レンカクは勃起した乳首を見て、口を近づけてきた。
舐められちゃう……。舌で、べとべとにされる……。
「んはぁっ」
ぱく、と乳首が食べられてしまった。歯で軽く噛まれ、舌で乳首を舐めまわされた。その間指はもう片方の乳首をいじり、こちらも勃起させられてしまった。
「やあ……、あっ、あっ、あっ」
ちゅうちゅうと吸われ、また舐められる。口が離れたと思ったらもう片方を舐めてきた。
「ああ、ダメ、レンカク……っ、だめ……」
ダメといいながら、私はレンカクを振り払おうとしなかった。気持ちいい、おっぱい気持ちいい……。
「レンカク……ううんっ……」
胸からカラダ全体に快楽が行き渡る。触られてもいないクリトリスが疼いて、足が開きそうになる。でも、開こうとすると膝で止まっているレギンスが邪魔だ。
レンカクに乳首を弄られると、この間までしていたことを思い出す。フクの上からカリカリと乳首をいじめられた日々。イキたいのにイケないもどかしさ。
イキたい……、はやくイキたい……。
「はあ……、ふふ、流石に乳首だけではイケないか」
胸から口を離したレンカクはフクをパパッと脱いで全裸になった。細くて、でも筋肉が付いているのも分かる。顔に比べて胴体は少し白い。
私のレギンスも脱がされ、足を広げられる。ぬち、と粘度のある水音がした。触られていないのに、しっかりと濡れている。
「すごい、とろとろだ」
指でおまんこを広げられる。
見られている。レンカクに、大事なところを……。
枕で顔を隠して、この後されることを想像する。おちんちんがおまんこにあてがわれて、狭い穴の中を進んでいく。壁を押しのけて進んでいき、一定のところまできたらおちんちんは抜かれていく。それを繰り返されて……。
と、思い出した。
「あ、あの……舐めなくて、いいの?」
そういえば、フェラチオをしていない。枕を少しずらしてレンカクの顔を見ると、少し余裕のない、焦っているような表情をしていた。こんなレンカクを見られるのは、今は私だけ……。
「ん、大丈夫。あとで舐めてもらうから。こんなに物欲しそうに入り口をくぱくぱさせてるんだもん、すぐ塞いであげなきゃ」
「——っ」
そうやって変態的なことを——
「んああああ……ッ」
ぷつ、と狭い穴が無理矢理広げられる感覚のあと、一気に肉壁も広げられた。カラダの中がレンカクで埋まっていく。切なかった下腹部が、少し満たされる。
「はあ……セリンの中、あっつい……」
私の両足を支えにして腰をゆっくりと前後に動かしている。おちんちんが引き抜かれると、ぬち、という水音がして、そのあと膣壁を押し広げられる。
「んあ、はあ、はっ、はぁ」
奥に進まれる度に声が出てしまう。抱えた枕で口元をしっかり隠して声が漏れないようにするが、どうしても出てしまう。
次第にレンカクの腰の動きが早くなっていく。レンカクは私のカラダの両側に手をついて、腰を動かしやすい体勢になり、さらに強く腰を打ちつけてきた。
「ふうっ!んっ、んっ、んっ」
ぱちゅぱちゅと、腰と腰がぶつかる度に音がして、カラダがベッドの上で上下に揺れる。ギシギシとベッドが軋む音が、なぜか恥ずかしい。
「ジャマ」
レンカクは枕を掴むとベッドの外へ放り投げてしまった。
「やぁ……っ」
私は慌てて両手で顔を隠したが、それもレンカクに阻止される。両手をレンカクにしっかりと押さえられ、顔が見られてしまう。
「もっと声聞かせて」
「くう……う、んあ、あっあっ、あっ!」
レンカクの腰の動きに合わせて声が出てしまう。少し前は、声を聞かせてと言われたら我慢していたのに、今では逆に声が大きくなってしまう。
こんな声がレンカクは聞きたいの?それで興奮してくれるの……?
「ああっ、あ゛っ、はああっ、やあっ」
レンカクの手から逃れようと、少し抵抗してみる。が、体重をかけているボーイの力は思ったよりも強くて、びくともしなかった。細いウデなのに、身長だって、そんなに変わらないのに……。やっぱり、おとこのこなんだ。
「あう、あっ、あんっ」
「かわいいよ」
「ううううう!」
顔を極力見られないように横を向くけど、部屋の照明でその横顔も見られてしまっている。
「あっ、あかりっ、けして……」
「んー?」
レンカクは照明パネルを一瞥すると、
「遠いから消せない」
と、にこりとしながら言った。
「と!届く!絶対届く!」
少しウデを伸ばせばいいだけなのに!
「やだよ、可愛いセリンの顔見てたいもん」
「う……、ううう」
恥ずかしい。こんなに恥ずかしくなるなんて思ってもなかった。顔から火が出そう。
「セリンのエッチな顔とエッチな声聞いてると、めっちゃ興奮するんだよ」
絶対に嘘だ。おまんこの中が気持ちいいから興奮してるだけだ。
それなのに、そう言われると嬉しい。
恥ずかしいのに、顔を見られてもいいかなとか、声出していいんだと思ってしまう。
「はあっ!はあっ!」
ギシギシとベッドが軋む音が強くなっていることに気づいた。シーツは乱れて、部屋の中が少し暑く感じる。レンカクの額をみたら、少し汗ばんでいる。暑いのは私だけじゃないみたい。
ぐちゅぐちゅと膣内が擦れる度に音が鳴る。この音は、私がどれだけ感じているかの指標だ。聞かれたくない。恥ずかしい。レンカクにおまんこを埋められて悦んでいるなんて、知られたくない……。
「はひっ、らめ、もうっ、れん……いっ、ちゃうっ……!」
恥ずかしさが脳を興奮させて、気付けばナニかが目の前に迫ってきていた。レンカクの前で、レンカクのおちんちんで、この感覚が得られることがうれしくて——
「いいよ、イッて」
レンカクの腰の動きが早くなる。私はぎゅっと目を瞑って、絶頂を迎える準備をする。
レンカクのおちんちんで、イッちゃう——ッ
「イく!イクぅ!」
ぎゅ、と全身に力が入り、カラダが跳ねる。呼吸を忘れて、下半身からくる快楽に身を委ねる。
「はっ——、は——んんっ!」
絶対の余韻に入る前に、再びレンカクの腰が動き始める。ぎゅうぎゅうとおちんちんを締め付ける膣壁は、さらに力を増す。さっきよりもおちんちんの硬さや長さをハッキリと感じ、先が壁の奥にくると少し痛みを感じる。
「だめ!イッた、ばっかりで——あああっ、ああっ!あっあっあっ!」
レンカクは私の言葉に耳を貸さずに腰を振り続ける。私の嬌声に紛れて静かな吐息が聞こえる。レンカクも、もうすぐイクのね……。
「セリン、のんで……っ」
「ふえ、え」
レンカクが膣からおちんちんを抜くと、私の顔の横まで移動してきた。愛液でべとべとになったおちんちんを扱きながら、それを私の口元にやり、捩じ込んできた。
「ふ、んむ……」
少しだけ白濁液が口元にかかってしまったが、残りは全て口で受け止めた。濃い愛液の味。おちんちんに絡まる白くなった愛液。自分の匂い。そして口に広がる精液特有の匂いと、味。
匂いと色んな味に少し吐き気を覚えたけど、レンカクが出し切るまでしっかりと咥え続けた。
吐精の最後の方になると先端を軽く吸って、中のものを全て出してもらう。
「む……」
おちんちんから口を離して、中のものが溢れないように手で抑える。精液と愛液、唾液と、少しの空気が口の中でいっぱいになっている。
「飲める?」
レンカクにそう言われたら、飲むしかない。
鼻から抜ける生臭さを我慢して、舌の上で全てを一つにする。それをこくり、こくり、と二回に分けて飲んだ。
「は、あ……」
口を開けて呼吸をする。しょっぱいのか苦いのかよく分からない味と、生臭さを伴った吐息が吐き出される。
「……美味しかった?」
「はあ……」
こくん、と頷く。
美味しいわけがない。とにかく匂うし。
でも私の中でたくさん擦って気持ちよくなってくれたことが嬉しくて、出来ればまた飲みたいと思った。
4
ホテルを出ると空はすっかり暗くなっていて、繁華街の方が煌々としているが見えた。
レンカクと手を繋いで、言葉もなくホテルを後にする。
付き合ってからまだそんなにエッチをしていないから、こういうときどうすればいいのか分からない。
無言はヘンかな?でも何を話せばいいのか……。
「お腹空いてない?」
声に反応して顔を上げると、レンカクと目があった。普段見る、愛嬌のある顔。さっきまでしていたことを感じさせない、いつものレンカク。
そんなレンカクと目を合わせるのがなんだか恥ずかしくて、思わず下を向いてしまう。
「ん、うん。空いてる」
「何食べようか。ここら辺だと……エビラーメンが美味しいとこあるけど、今からだと並ぶかなあ。それかカニサンド……は、ロビーでも食べられるからなあ……」
うーん、と考えながら歩くレンカクの横顔を少しだけ視界に入れる。その顔がカッコよく見えて、また恥ずかしくなって、再び下を向いた。
「れ、レンカクと一緒なら、なんでも美味しいわよ……」
「ん。んー、そうかぁ。じゃあエビラーメンにしようか」
「うん」
「セリン」
名前を呼ばれて、顔を上げる。
「顔真っ赤だよ」
「ッッ!」
クスクスと笑うレンカクに何も言い返せない。
困ったな。ちゃんと好きだ……。