ラナと蟲の戯れ

 シャワーを浴び、部屋着に着替えてから、ラナはバニラの部屋を訪れた。Tシャツとハーフパンツから伸びた白く細い手足は、鳥肌が立っている。

 ◆ ◆ ◆

 昨日の昼過ぎの事だ。前日のドクターの激しい責めを思い出しながら、ラナは艦内の廊下を歩いていた。ライブ中なんて嘘をついて、それで果てた自分が変態みたいではないか。今度思い切り酷い事をしてやろう。本当に配信するか——いや、ドクターは何をしても感じるだろう。乱暴に扱ったって、放置してもあの肉棒を反り立たせ、気持ち良さそうにするだろう……。
「どうしようかなぁ……」
「何がですか?」
 真後ろから話しかけられ、思わず身体を強張らせる。
「バニラ……、こ、こんにちは」
 サラサラの金髪に、宝石のように輝く赤い瞳が、ラナの事を不思議そうに見つめている。バニラは微笑み、挨拶を返す。
 「何か悩み事ですか?私でよければ聞きますよ」
 屈託のない笑顔がラナの胸に刺さる。ドクターをどう虐めるか考えていたなんて話せるわけがない。
「ううん、大した事じゃないから、大丈夫」
「そうですか。でも、私は悩みを聞いてほしいです!」
「悩み?どんな?」
 バニラがこの様に話しかけてくるなんて珍しい。作戦で一緒になる事は多いが、プライベートな事は深く話したことがない。少しでも力になれればと思い、バニラの話を聞いた。

「ペットの餌やりをお願いしたいんです!」
 バニラは少し泣きそうな顔で、ラナに懇願した。幼い顔だちのバニラが瞳を潤ませていると、どんな頼みでも聞いてあげなくては、という思いになる。明日の朝から数日間留守になる。いつもは他の人に頼むのだが、皆任務に駆り出されるとの事だった。メランサの紹介で、ラナならきっと引き受けてくれる、と言われ頼ってきたとの事だった。メランサがそんな風に名前を出してくれる事が嬉しかったし、バニラも困っているので快く引き受けた。
 その後バニラの部屋へ行き、ペットと対面し、餌やりの仕方を教えてもらった。
 
 ◆ ◆ ◆
 なに、ただ箱のボタンを押すだけだ。他の事はしなくていい。
 深呼吸をして両腕をさする。意を決し、バニラの部屋のドアを開けた。

 部屋は昨日も見た通り、散らかっていた。転がるトレーニンググッズに、脱ぎ散らかされた洋服。本はベッドの下や枕元に乱雑に置かれている。トレーニングや武器の扱いに関する本が多いようだが、流行のファッション誌もあった。そして部屋の隅には、ペットを入れておく為の保温箱ケージがあり、その中に黒い甲羅のオリジムシと小型のハガネガニが蠢いている。
 よく戦場で見かけるオリジムシとは違い、甲羅は艶やかだ。生き生きとしているし、きちんとした環境で飼育出来れば、不衛生という事はないのかもしれない。感染生物なので、危険な事には変わりないのだが。
 昨日、はじめてこの子たちを見た時、どう反応して良いのか分からなかった。表情に出さないよう気をつけながら、特殊な素材で出来ている保温箱の事とか、餌が出てくるボタンなど、説明を受けながら、メランサやリスカム、フランカもこの子たちと対面した事があるのかと考えていた。
 バニラはペットに対しデレデレと可愛さを語っていたが、よく分からなかった。言葉は右耳から左耳へ流れていったし、流れなくても理解出来なかったと思う。
 餌をやる為に保温箱に近づくと、ペットたちが嬉々としてこちらへやって来た。保温箱から出てきて欲しくなかったが、耐えながら餌が出てくるボタンを押す。
 皿に出た餌を夢中で食べるオリジムシと小型ハガネガニを確認し、ほっと一息つく。
 改めて部屋を見回し、クローゼットの前に下着が脱ぎ散らかされているのを見つけた。バニラはこういうのを見られても気にしないタイプなのだろうか。自分のものよりも大きなブラジャーのカップをまじまじと見る。
「バニラはあの顔でスタイル良いからなぁ……」
 170センチを超える身長に、胸も尻も立派だ。それでいてしっかりとくびれているし、タイトなスカートから伸びる足は筋肉と脂肪が程よくついている。そんな体つきとは真逆の幼い顔だちをしているのだ。なんだか、ずるい。
 落ちているブラジャーやキャミソールなどを拾い、一緒に落ちていた黒い紐も拾う。小さな布がついていて、すぐにTバックだと気付いた。本当に、あの顔に似つかわしくない。
 ベッドにも洋服が乱雑に置かれていたので、ベッドの上で衣類を畳む。洗った方がいいような気もしたが、流石に頼まれていないので、ベッドの上に並べておく。
 いや、こうして部屋を片付けるのも余計なお世話かもしれないが……、ペットが自由に部屋の中を歩き回るようだし、床は広く使えたほうがいいだろう。
 部屋の中央近くに転がっているダンベルをベッドサイドへ置き、ヨガマットもその近くへ置く。食べかけのポテトチップスの袋をゴミ箱へ捨て、テーブルに置きっぱなしの食器を洗う。本をまとめてテーブルの上に置き、床が汚れている事に気づいたので、軽く掃き掃除をしてから、キッチンペーパーを濡らして床の汚れを拭き取る。
「ふぅ、これくらいでいいわね」乱雑だった部屋が多少片付き、達成感を感じていると足にヒヤッとした感触が触れた。
 驚いて振り向くと、オリジムシがラナのそばまで来ている。全く気が付かなかった。
 振り払う訳にもいかないので、押しちゃだめと言われた部分を避けて撫でてやる。甲羅部分に感覚があるのか分からないが、ツルツルとした甲羅は案外気持ちがいい。
 おとなしいし、そんなに怖がる事はないのかもしれない。

 にゅるり、とオリジムシから太い触手のようなものが数本伸びる。触手はラナの足をゆっくりと撫で回してきた。ひんやりとする触手はねばねばとした液体が絡まっていて、ラナの足を濡らしていく。全身鳥肌が立ち、慌てて引き剥がそうとしたが、思ったよりも柔らかい触手に手が止まる。もし傷つけてしまったら、と思うと、力を入れられない。
 ……そして、少しだけ気持ちが良い。
 ラナが拒まないと分かったのか、触手はラナの太ももに絡まりだしてきた。
「ちょ、ちょっと……」
 触手がハーフパンツの中へ侵入してきた。ショーツをかき分け、肉芽に触れる。
「ひっ……!あっ……」
 触手の柔らかさと体液に、身体は正直に反応した。ハーフパンツの中をもぞもぞと動き、肉芽と割れ目を触手は何度も往復している。足を閉じる力は開く方へとシフトし、侵攻し続ける触手への興味が勝る。
「んぐっ……、あぁ、だめぇ……」
 だめと言いながら、ラナは触手が肉芽に触れやすいよう、足を広げる。二本目と三本目の触手がショーツの中で割れ目を見つけ、徐々に穴の中へ侵入してくる。触手の体液とラナの愛液で、詰まる事なく触手は穴の中へ入ってきた。
「はあぁぁ♡ああ……、すご……」
 クリトリスを舐められているような感覚と、柔らかいがどんどん膣の中を満たしていく触手に、身体を委ねる。出たり入ったり、膀胱を突き上げるように動いたり、子宮に絡まったりと、ラナの膣内のあらゆる場所を味わっているようだった。
 ラナは床に全身を預け、足をがに股に広げ、手で自分の胸を揉み始めた。
 ここがバニラの部屋であり、バニラが不在であり、バニラのペットで自慰に耽っている事はしっかりと理解しているが、頭の中は気持ち良くなる事でいっぱいになっている。
「バニラ、ごめん……、すぐ、終わらせるから……はぁ、んっ」
 Tシャツを脱ぎ、ハーフパンツとショーツも脱ぐ。人の部屋で全裸になり、改めて股間を見ると、気味の悪い触手が躰を弄んでいる。触手の動きに合わせて腹はありえない動きをしていて、腹を押さえると、中で蠢いているのがはっきりとわかる。
「うああ……、気持ち、いい……」
 夢中で乳首を弄る。指先で転がし、親指と人差し指で摘む。指を唾液で濡らし、滑りを良くする。その間も肉芽は扱かれ続け、膣内を掻き回される。じっくりと愛撫されているようで、焦ったかった。
 横から別のオリジムシが、触手を胸へと伸ばしてきた。乳首の上を這い回った後、乳房を縛り上げる。別の触手で更に乳首を撫で回す。
「はあっ、はあっ、うぅん!あうっ」なぜこの子たちは、こんなに手慣れているのだろう。もしかして、バニラもこんな事をしているのだろうか。ならば、メランサも、リスカムも、フランカも……?
「くうぅぅッ!はぁあ♡」
 他人の部屋で着ているものを全て脱ぎ、ペットで感じている事に背徳と興奮を覚える。肉芽は触手に触ってもらう為に身を乗り出している。
「いく……、オリジムシで♡こんな♡あ、あああぁぁ‼︎」
 膣が痙攣し、触手が驚いて勢い良く膣から抜け出る。その勢いが新たな快楽の波を引き寄せた。目の前が真っ白になり、仰け反って絶頂を味わう。その感も胸は触手に責められ、いつもより深く果てた。

 胸が大きく上下している。乱れた呼吸を整えながら上体を起こそうとした時、小型ハガネガニが目の前に飛んできた。こんなに俊敏に動けるのかと驚いた直後、目の前に薄いピンク色の肉棒が飛び込んできた。銀色に輝く身体の中はこんな色なのか、細くて、綺麗な色だなと思っていると、それが口の中へ入ってきた。細い肉棒はほんのりと熱を帯びている。人間の肉棒と違い、まるでストローのようなそれを舌で転がしてみる。ハガネガニは悦んでいるのか、体を動かしピストン運動をはじめた。こればっかりは、バニラが教え込んだに違いない。
 唾液を絡めながら、肉棒を弱めに吸ったり先端を重点的に舐めてみる。夢中になって肉棒を舐めていると、またしても膣の中に異物が入ってくる感覚があった。今度は一本が躊躇なく進んでくる。肉芽を扱く事も忘れていない。こうすると愛液が溢れ、侵入し易くなる事を覚えているのだろう。
 膣内に入った触手は、再び子宮の口を絡め取る。程よい強さで握られ、思わず腰が持ち上がる。こんな事、人間では無理なのだ。今のうちにじっくり味わっておきたい。
 触手は子宮の入り口を探り、周辺を幾度も舐めてくる。その度に、ハガネガニの肉棒を咥えた口から吐息が漏れる。入り口を見つけた触手は、ぴたりと閉じている口をこじ開け、無理矢理中へ入ろうとする。
「うぐぁ!はあッ」熱い息と共に声が上擦る。触手はうねうねと身を波うたせながら、膣壁を押し上げながら子宮の中へ侵入してくる。はじめての感覚に頭が真っ白になる。こんなの知らない、これは体験しては行けない感覚だ——
 色んな情報が目の前を駆け巡るが、それも一気に吹き飛ぶ。触手は子宮の中でピストン運動を始めた。子宮から抜かれる感覚と、膣内を出てくる感覚が同時にラナを襲う。入る時はまだ少し時間が掛かるが、抜かれるのは一瞬だ。
「はあ゛‼︎ふぅぅ……、ああ゛ッ‼︎ふぅん……、あ゛あ゛ッ‼︎あがっ……、はぁ、はぁッ‼︎」
 ハガネガニの肉棒を舐めることなど忘れ、下腹部の奥へ感覚を集中する。
 気持ち良い、気持ち良い、オナニーでも、ドクターのペニスでも、こんな事味わえない。身体が壊れてしまってもいい、もっと触手が欲しい。
「へェっ……ああっ、はぁっ、ああああッ‼︎」
 膣の中に意識を集中していると、尻の穴へぬるりとした感覚が当たった。ああ、お尻の穴も犯されてしまう……。予想通り、触手はアナルをほじくり、中へ入ってこようとした。ラナは触手が入ってきやすいよう、力を抜く。尻穴へ歓迎された触手は、壁という壁を撫で回し、出たり入ったり、少し硬さを増したり、慣れた様子で排泄器官を犯していく。
「おっ、おおっ‼︎んんうう‼︎」
 下半身にオリジムシが二匹、触手を伸ばして二つの穴と肉芽を犯し、胸にも触手が絡みつく。顔の上にはハガネガニがのし掛かり、ラナはすっかりムシのされるがままだ。
 ハガネガニの肉棒は、気付けば二倍ほどの太さになっている。長さも増し、喉の中へ入ってきそうだ。下半身で感じている快楽を肉棒にも味わって欲しくて、懸命に舐める。その甲斐あり、肉棒からミルクが勢いよく噴射された。喉を強く刺激され、思わず咽せてしまう。それでも射精は止まらず、大量の白濁液がラナの顔を汚していく。
「えぶっ……うえっ……‼︎」
 強い青臭い匂いが鼻を刺激する。人間のそれとは違い、濃度は高くないが粘度があり、量が尋常ではない。
 匂いで眩暈がしたが、子宮とアナルへの刺激でそれもなくなる。
「それ、もう゛、むりぃ‼︎いくっっ‼︎」
 触手が子宮の中から勢いよく出ていくと、膣内は強く痙攣を始めた。潮が勢い良く噴出したが、それでも触手は責めを辞めず、子宮の中を支配している。
「むりぃ‼︎いってるうう゛う゛う゛‼︎やめでぇぇ」
 ラナの願いを聞き入れてくれたのか、子宮の中へ捻り込まれた触手はそれ以降激しい動きをしてこなかった。その代わりに、中に大量の白濁液を流し込んでくる。触手と白濁液で満たされた子宮は大きく膨れ、その変化は腹を見れば一目瞭然だった。
 腹の中が異常な量の液体で満たされ、それすらも果てる材料になった。意識を失ったラナは手足を痙攣させ、膣とアナルから触手が抜けると自然と身体が跳ねた。膣から粘度の高い白濁液が、止めどなく溢れ出てきた。

 目を覚ますと、窓の向こうに見える空が白んでいた。今日は晴れかな、と思いながら身体に目をやると、未だにオリジムシたちはラナを犯していた。
 触手は何本入っているか分からない。腹の動き方をみるに、三本は入っているようだが、それにしては入り口が広がっている感覚があるので、四本だろうか。ムシたちは一匹につき何本触手を持っているのだろう。
 更にハガネガニが腹の上で体を動かしている。どうやらハガネガニのペニスも入っているようだ。子宮は知らない感覚を捉えており、触手とも違うので、今子宮に入っているのはハガネガニのペニスか。
「う゛、あ゛ッ……♡」
 ラナの身体は凌辱に慣れてしまったようで、寝起きにも関わらず簡単に達してしまった。目の前がチカチカと光り、身体が跳ね、膣を締め付ける。そうするとハガネガニも肉棒を太くさせ、勢いよく子宮の中へ子種を送り込んで来た。
「ひ、い゛ッ⁉︎」
 オリジムシの触手が出す射精とは比べ物にならない威力に、身体が震え恐怖感がラナを襲う。強い痛みが腹の中で増していく。
 この射精は終わらないかもしれない、そう思えるくらい長い射精だった。
 子宮からペニスが抜かれると、中に入った精液も出てくる。勢いよく膣からミルクを出すと、オリジムシも触手から勢い良く白濁液を流し込んできた。
 まるでラナを孕ませるのは自分の方だと言わんばかりだ。
「あひ♡これ、赤ちゃん、できちゃうぅ……♡」
 ラナの躰の中に子種を全て注ぐと、触手は壺の中からぬるりと出ていく。異物が全て去った膣からは、白い液体がどんどん排出される。
 ムシたちのあんな小さな身体に、どれだけ溜め込まれているのだろう。
 ベトベトになった身体を起こし、なんとかペットたちに餌をやる。また今日の夜、ここに来なくてはならない。そしてそれはまだ数日続くのだ。
 餌を無心で食べるムシたちを見やりながら、バニラが帰ってくる日が早く来るよう願う。願いながら、白濁液を潤滑剤代わりにクリトリスを擦り始めた。

 ◆ ◆ ◆

「パフューマーさん、本当にありがとうございます!」
 太陽の花ような明るい笑顔で、バニラは感謝を伝えた。
「部屋までピカピカにしてもらって。今度お礼の品を持っていきます!」
 日が傾き掛けた頃だったが、てっぺんで輝く真夏の太陽のような眩しさを覚える。ラナは自室まで礼を言いに来たバニラを直視できなかった。部屋が綺麗なのは、ラナの事情によるものだが、バニラは「なんて親切な人!」と感激しきりだ。
 あの日から、ムシたちに慰めてもらうのがクセになってしまった。人の手や性器ではなし得ない快楽、大量に膣内に射精してもらってから、精液が膣から噴射される感覚にすっかりハマってしまった。
 部屋はムシたちとラナの匂いで溢れ、あらゆる液体が部屋中を汚した。
「あまり気にしないで……」後ろめたさがラナにのしかかって来る。
 出来れば早くバニラと別れたかったが、バニラはそっと顔を近づけて
「どの子がお気に入りですか?」などと聞いてきた。
 きょとんとしていると、バニラは頬を人差し指で掻きながら
「ムシたちの射精って激しいですよね」
 と、恐縮した素振りで、凄い事をさらっと言ってのけた。
「え……、と……」
 顔から血の気が引いていくのを感じたが、実際は逆上のぼせるくらい赤くなっている。
 そんなラナの様子をみて確信を得たバニラは「今度はお世話じゃなくて、遊びにきてくださいね」と言うと、笑顔でラナの前から立ち去った。
 その後ろ姿は最高の一日だったと喜びを溢れさせており、一方ラナは自分のした事を必死に思い出そうとしていたが、記憶を呼び出す機能が停止してしまったのか、数日の事が思い出せなかった。
 ただ、性を貪るのも大概にせねば、と反省をした。